引き継ぎ資料は、ちゃんとあった
今日、生産技術部から関西の技術営業に着任した。営業はほとんど経験がないが、引き継ぎ資料はちゃんとある。担当顧客の一覧、採用グレード、単価表、過去の見積履歴。必要な数字はすべて揃っている。
とりあえず、一安心だ。
2週間が経ち、さっそく手が止まる。大口顧客から特殊仕様の少量ロットの依頼が来たのだ。技術的には作れるはず。ただ、この量で工場に無理を言えるのだろうか。前任者は同じような案件を何度か通していたようだが、いくら資料を読み漁っても、どうやっていたのかはわからずじまい。品質保証部に先に話すべきなのか、生産計画に直接あたるべきなのか。断るとしても、この顧客にどこまで正直に言っていいのか悩む。
いざ、困った時の神AI頼みだ。カタカタカタ…
当該グレードの最小ロットは5トンです。これを下回る場合は生産計画部門との個別調整が必要になることがあります。詳細は関係部署に確認してください。
極上なまでに差し障りない答えだ…。仕方ない、上司に伺いを立てよう。
「前任者の携帯に電話してもいいですか」
人は育つ。知識は、失われる
日本企業に勤めている方なら、上に似たエピソードは誰しも体験したことがあるのではないでしょうか?
ジョブローテーションは人材育成の面で日本企業が持つ特有の強みです。ただ、この制度は蓄えてきた知識を数年ごとにリセットしてしまいがちです。引き継ぎの時に残らないものを挙げればキリがありません。
- どこまでが自分の判断でよく、どこからが上申なのかの線引き
- 工場や他部門に、どこまで無理を言えるのか
- 顧客ごとの事情や、過去のいきさつ
- 誰に、いつ、どう話すと社内が動くのか
厄介なのは、こうした「言葉になっていない知識」こそが仕事の質を決めるという点です。もちろん、企業はただ手をこまぬいていたわけではありません。マニュアルを整備し、引き継ぎ書のテンプレートを用意し、社内Wikiやナレッジマネジメントの担当部署まで立ち上げて…。いまや多くの企業が社内文書データベースに繋がれたAIチャットボットを使ってもいます。
なのに、現場の体験はあまり変わりません。冒頭の担当者が本当に知りたかったのは、「5トンを下回る依頼でも、この顧客なら生産計画の誰々さんに直接相談すれば通ることが。ただし、ちょっとコツがいる。ホニャララ、ホニャララ…」といった類の話です。これは前任者の頭の中にしかないのです。
だったら、書かせずに引き出せばいい
クラリファイの出発点はここです。専門家に書かせるのをやめて、問いかけて引き出す。「なぜそう判断したんですか」と聞かれて初めて、判断基準が言葉になります。人は、白紙には書けませんが、問いには答えられます。
クラリファイがやっていることは、大きく2つです。
1. インタビューで引き出す。しかも日常的に。
異動辞令が出てから慌てて引き出すのではなく、日々の業務の流れの中で継続的にインタビューを重ねていきます。そうすることで、常に「残っている状態」を作っておきます。
クラリファイ上では、AIエージェントのクララが欠けている知識を特定し、それを補うためのインタビューを担当者向けに企画します。短時間で、業務の流れを止めない形で受けられるように、様々な仕掛けを用意しています。好きなタイミングで中断して後から戻ってくることもできますし、音声だけでやり取りすることもできます。

日々のインタビューが積み重なり、常に「残っている状態」を作っていく。
2. AIが使える構造で保存する。
クラリファイは引き出した知識を業務プロセス図、メンタルマップ、プレイブックといった、AIが読み取って活用できる形に構造化して保管します。ここまでやって、はじめて知識は使える資産になります。

引き出した判断の連鎖を、AIが読み取れる構造として保存する。
その結果、社内チャットボットの接続先に、初めて「専門家の頭の中」が加わります。
暗黙知につなぐと、AIは実務を語りはじめる
社内チャットボットに、同じ質問を2回投げてみましょう。片方は社内文書データベースにつながっているだけ。もう片方はクラリファイで蓄積した暗黙知にもつながっています。


左:社内文書データベースのみに接続。右:クラリファイの暗黙知にも接続。使っているモデルは同じで、違うのは接続先だけ。
左側の回答は、条項番号まで引いて正確です。ただ、この通りに動くと失敗します。右側は「様式を出す前に計画課へ電話を入れる」という順番を厳守と言い、2023年11月に同じ顧客で同じ失敗が起きたことまで挙げています。
違うのは、暗黙知に接続されているかどうかだけ。怖いのは、左側が間違っていないことです。正確なので、誰も疑いません。
電話しなくて済む引き継ぎ
クラリファイ導入後の流れを時間軸で追ってみます。
着任時 — 前任者の知識がすでに構造化されて残っています。初日から「なぜこの条件なのか」を質問できます。前任者の携帯に電話する必要はありません。
在任中 — 日常業務の中でインタビューが続きます。自分が下した判断や、遭遇した例外が、そのつど蓄積されていきます。
異動辞令 — 慌てる必要はありません。引き継ぎ資料の作成は、残っているものの確認作業だけです。
後任の着任 — 前任者の知識に自分の知識が上乗せされた状態から始まります。世代を重ねるごとに厚みが増していきます。
もちろん、引き継ぎ書を拵える商習慣は今後も必要です。そこに書けなかった部分を埋めてくれるのがクラリファイなのです。
転勤するのは人だけでいい
かくいう筆者も、かつて働いていた会社で、東京本社から仙台支局への転勤を経験しました。転勤は人を育てます。ただ、人と一緒に知識まで異動させる必要は、もうありません。
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